ジャニーズ事務所から学ぶ株式会社のガバナンス

はじめに

昨今はジャニーズ事務所やビッグモーターなど、オーナー企業の経営陣が様々な問題を起こしている。

そこで問われるのがコーポレートガバナンスである。

コーポレートガバナンスとは、会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みのことであるが、オーナー企業においては株主と経営者が同一・同族である傾向があるため、ガバナンスが効いていないケースが散見される。そのため、オーナーの暴走を止めることが出来ず、様々な問題を引き起こしてしまうケースが多い。

そこで、本稿では、株式会社の仕組みとガバナンス概要、オーナー企業におけるガバナンスの問題点について解説を行う。

株式会社の仕組みとオーナー企業

株式会社とは、会社のオーナーである株主が出資したお金を用いて、経営陣である取締役に経営が委任される形式の会社です。このような仕組みを、所有と経営の分離といいます。ポケモンとポケモントレーナーの関係に近いかもしれないですね。

取締役は株主から委任されて会社経営しているが、株主目線からすると「取締役はちゃんと経営しているのか?」というのが気になって当然だろう。取締役の経営状況をチェックするために、株主総会を開いたり、年に一回決算書の提出を求めたり、場合によっては社外取締役や監査役・監査法人に会社の状況をモニタリングしてもらう仕組みのことを、コーポレート・ガバナンスといいます。

ほとんどの中小企業ではそこまでガバナンス構築に力を入れませんが、会社の規模や社会的責任が強くなればなるほど、このあたりのチェック体制を強くすることが各種法律で要請されています。

オーナー起業におけるガバナンス

株式会社の前提として、所有と経営の分離がありました。そのため、ガバナンス構築をして取締役をモニタリングする仕組みが必要でした。しかし、経営者=株主であるオーナー企業の場合はどうでしょう。

オーナー企業の場合は、経営者と株主が同一であるため、経営者に対するモニタリング体制を作るインセンティブがなく、ガバナンスに対して疎くなる傾向があります。ポジティブに言えば「所有と経営が一致しているから経営に対する舵取りがオーナーに集中する」とも言えるのですが、それが度を過ぎてしまうと、経営者の暴走を止める人がおらず、経営者の暴走を招いてしまう可能性が大きいです。

ジャニーズ事務所のガバナンス問題

株主構成と経営陣

ジャニーズ事務所の株主構成を見ていると、ジャニー氏の死去前までは、ジャニー氏50%, メリー氏(ジャニー氏の姉)50%の計100%、ジャニー氏の死去後はメリー氏50%, ジュリー氏(ジャニー氏の娘)50%, メリー氏の死去後はジュリー氏100%という典型的な株式の同族保有でした。そして経営陣を見てみると、株主であるジャニー氏・メリー氏・ジュリー氏が取締役として在任していることから、典型的なオーナー企業であることが伺えます。そのことから、オーナーの社内での影響力が非常に大きいことが想像できます。

ジャニーズ事務所のガバナンス体制

また、調査報告書によると、ジャニーズ事務所では、取締役会は、開催されておらず、ジャニー氏に対する監督機関として全く機能していなかった。とされている。それに加えて、内部監査の不在、社内規程の欠如、内部通報制度の不十分さなど、典型的なオーナー企業のガバナンスあるあるの問題点が挙げられていました。

青少年への性加害という犯罪行為を仮に行っていた場合は報道などで大問題になるはずであったが、ジャニーズがマスメディアに対して強い影響力を持っていたことから、マスメディアの沈黙という形で報道がされませんでした。

このように、マスメディアに対する強い影響力を持ったオーナー企業の暴走を止めることが出来ない体制であることがジャニーズ問題をここまで深刻化させた要因になります。

詳しい調査結果は、リンク先の調査報告書を参照ください(性加害の内容が非常に酷いので、閲覧注意です)。

オーナーにおけるガバナンスの構築の必要性

オーナーにおけるガバナンス構築のメリットとして、企業イメージ向上、社員の士気の向上、法令等の遵守体制の強化など、企業の健全性を上げられることがあげられます。しかし、株式会社はどうしても利益追求が優先されてしまうため、強い目的意識がないとガバナンス構築行わないかと思います。しかし、企業をオーナー企業レベルから脱却しサスティナブルに成長させていくためには、ガバナンス体制を構築する必要があります

しかし、経営者からすると「俺が全て決めたいのに何故ブレーキを利かすのだ?」という疑問を抱くかもしれません。確かにそれは一理あります。しかし、そこで伝えたいのが「ブレーキが脆弱な車に乗って思い切りアクセルを踏めますか?」ということです。確かにガバナンスはブレーキ的な側面はありますが、きちんとブレーキを踏めるからこそ思い切りアクセルを踏めるところがあります。そうすることでサスティナブルな成長のための基盤が出来上がるのです。

また、ガバナンスを構築するのは経営者です。昔尊敬する先輩が社長の倫理観以上に会社の倫理観は到達しないと仰っていましたが、その意見には僕も賛成です。会社の雰囲気や企業文化を構築するのは社長であることから、社長自らが自分を律して、恥ずかしくない会社を作ることが今後求められていくことでしょう。

おわりに

昨今はオーナー企業の問題が多く報道されていることから、中小企業におけるガバナンス体制について改めて考えさせられこの記事を書きました。特にIPOを目指している社長などは「ガバナンスってうるさいなぁ」と思うかもしれませんが、それが結果として企業を強くすることに繋がるため、なるべく誠心誠意向き合うことが重要です。それに向き合わず後から問題になるケースも後が経ちません。

社長の倫理観以上に会社の倫理観は到達しないため、経営者自信が高貴なる魂を持ち続けることが、経営の本質なのかもしれませんね。

おまけ

カカチャンネル様のこちらの動画は、ジャニーズ事務所の問題のみならず、多くの企業に関する解説動画を掲載しております。非常に面白く学びになるため、興味のある人はご覧ください。

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