さっくり考える原価計算

はじめに

「この商品の原価考えるとボッタクリだよね??」とネタ半分でお話をすることが多いと思います。

とはいえ、「原価」とは何を指しているか曖昧なまま会話をすることも多く、特に原材料費だけで説明されることがしばしばあります。

会計を学んでる人からすると「原価ってのはなぁ!そうじゃないんだ! 岡本清先生の『原価計算』を読め!!」と言いたくなることもあるでしょう。

流石に岡本先生の原価計算を投げつけるのは過激すぎるので、本稿では、「原価」について簡単に説明していきます。

そもそも「原価」ってなに?

「ドリンクバーの原価って10円だから、もとなんてとれないよ」なんて会話を耳にしたことはありませんか?

これは原価のごく一部のことしか説明していないと言えるでしょう。原価計算基準によると、製造原価要素を形態別に分類すると、材料費・労務費・経費に分類を行います。

簡単に言うと、原価=材料費+労務費+経費 です。

先ほどのドリンクバーの例では、労務費と経費を無視して材料費のみで語ることが多いです。

だからTwitterでも、人に物品の制作をお願いするときに材料費だけで依頼する人がでてしまうのでしょう。人間の労働の価値を忘れてしまっているのです。

よくよく考えれば、どんな商品を作るにも、作る”人”あるいは”機械”が必要ですし、直接製造に関係しない、工場の家賃・水道光熱費などもかかってきてしまいます。

このように、製造に直接かかる原価を製造直接費、一定製品と直接は紐づかない原価を製造間接費に分類します。

直接費はどの製品に帰属する原価なのかがわかるものですが、間接費は工場(会社)全体に対しにて発生する原価で、複数種類の製品を作っている場合適切に配分することが困難です。

実際の企業は「原価計算基準」(難しい話になるのでここでは詳しいことには触れない)に従って、これらを各製品に配分していきます。

材料費労務費経費
直接費原材料製造に従事する工場担当者賃金外注費
間接費機械の燃料・包装材製造に従事しない工場担当者賃金家賃・水道光熱費
原価区分の一例

このように考えると、原材料費(直接材料費)だけを原価だとして考えることは誤っていることがわかるでしょう。

また、原価計算を行うにしても、ビジネスモデルによってその中身が変わります。それでは、原材料費以外のことも考慮してさまざまなビジネスを考えてみましょう。

原価計算を行うべき会社と留意点

原価計算を行うことで、正確な損益を把握することは出来ると思いますが、必ずしもすべての会社が原価計算を行う必要はありません(もちろん損益管理はちゃんとやる前提ですが)。

原価計算を行うことが望ましい業種は、仕掛品の管理および製品ひとつあたりのコストを厳密に計算する必要のある製造業・プロジェクトごとの稼働工数を管理して損益をきちんと把握する必要がある受託開発・ソフトウェアの投資額の回収を適切に見積もる必要があるソフトウェア開発業などが特に重要です。

正しい原価計算を行ううえでキモになることが、直接費なるべく正確に識別し、正しくプロジェクトや製品につけることです。

間接費についてはどういった基準で配賦を行うかという点が非常に困難であり、恣意性を排除することが難しいのが実態です。また、配賦のための指標を収集するのにも苦労することから、実態としてしんどい部分があります。

したがって、直接費を正しくプロジェクトや品目につける体制をつくることが非常に重要であり、ERPパッケージの導入もそのような体制を作ることが重要といえます(ここで苦労する会社が多いけど)。

中小企業やスタートアップの場合は、まず人件費の正しい工数を集めて入力することからスタートしてみるのが良いでしょう。ジョブカンやfreee人事労務など、安価でプロジェクト管理を行えるシステムもあるため、そういたところから導入を行うと比較的ラクだと思います。

ビジネスモデルにあった原価計算が大事

当然ですが、企業ごとにビジネスモデルが異なることから、それにあった原価計算や管理体制の構築が大事です。

ビジネスモデルが異なるということは、〈3区分(材料費・労務費・経費)×2区分(直接費・間接費)〉による回収モデルが違うということです。

自社の変動費と固定費はなんなのか、材料費・労務費・経費の特徴が何なのかを正確に把握する必要があります。

そうした理解が、資金繰り・予算を考えていくことにもつながっていくことでしょう。予算についてアウトソーシングする会社が少ないのは、ビジネスに関する理解をきちんと反映することが難しいことの現れとも言えるでしょうね。

まとめ

本稿では、日常的にも耳にする「原価」をきっかけにして、会計の観点からお話ししました。

「原価」という言葉は、事業などの大きな括りで使われることが多く、意識する機会は多くなかったかもしれません。

これをキッカケに、原価というもののあり方について考えて見るのも面白いかもしれないですね・・・!

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