ちゃんと使われるマニュアルを整備運用するコツ

はじめに

さまざまな企業において「マニュアル」というものが整備運用されているかと思います。

しかし、マニュアルが存在するだけで使ったことはほとんどない。もしくはマニュアルの存在なんて知らないという方もいると思います。

なぜそうなるのでしょうか?それは、マニュアルを作成しっぱなしできちんと運用することを想定していないからです。

マニュアルは作成するだけでなく、ちゃんと使われるように”運用”していくことも重要です。

そこで、ちゃんと使われるマニュアルを整備運用するコツについてお話していきます。

マニュアルのメリット

まず、マニュアルを利用することによるメリットを挙げていきます。

1.業務品質の均一化・業務の一般化

マニュアルは”情報ツール”の一つです。

基本的な業務知識を得るだけでなく、各々が直面した課題・解決策を書き足していくことでノウハウが蓄積されていきます。

全員が情報を共有でき、「私は知らなかった」という情報格差を減らすことができます。また、業務の要点がわかるため、社員間の業務クオリティの差を小さくすることができます。

さらに、マニュアル化により業務分掌がきちんと明記されていれば、タスク管理やレビュー体制などの構築が可能になります。

そうすることで、

「Aさんが休んだらその業務については誰もわからない」

「ベテランさんが辞めたら、仕事の質がガクッと落ちてしまった」

というような事態を避けることが出来ます。

2.フィードバック

マニュアルを作成・更新していくこと自体が、業務内容の振り返りになります。

例えば、毎月定型的に行う業務のなかで「これって実態と合ってないよね?」といったことに気づくきっかけとなり、マニュアル自体の見直しが出来るようになります。

また、作業のミスりやすいポイントなどをきちんと明記しておくことで、次回同じ業務をするときに効率的に作業することができます。

つまり、マニュアルは人と人での情報ツールだけでなく、過去の自分からのアドバイスともなるのです。

マニュアルに過去の論点やつまずきポイントが記載されていれば「過去の俺ちゃんとやってて偉いな」となるはずですが、大事なポイントが記載されていないと「過去の俺ちゃんとやれよ」と思うはずでしょう。

3.人材育成の効率化

マニュアルがあることで、業務の全体像がいち早くわかりるようになります。そうすることで、説明コストを格段に下げることが可能です。

また、マニュアルを利用することで「教える人によって言ってることが違う」ということを防ぐことが可能になります。

例えば、ファミレス等のマニュアルは非常に秀逸で、非常に簡素でありながらも、それらを実践することで一定の成果を出すことが可能になっております。もちろんオペレーションを洗練している前提になってしまいますが、最低限の教育で想定しているオペレーションを遂行することが出来るようになっております。

なぜ使われないのか

上記のように、マニュアルを利用することには多くのメリットがあるのに、なぜちゃんと運用されないことが多いのでしょうか。それには以下のような理由があります。

マニュアル整備に時間・手間がかかる

マニュアルを整備するには多くの時間と手間がかかります。

細かく・網羅性のあるマニュアルになるほど、マニュアルの整備に時間がかかるため通常業務と並行してマニュアルを整備しようとすると、とても大変です。

マニュアル更新には時間がかかりますし、「繁忙期のとても忙しい時に、並行してマニュアルを整備なんてしてられない!」となってしまいます。

そうすることで、マニュアルにどんどん手を加えられなくなることで、陳腐化が進んでいってしまいます。

運用する意識が浸透していない

マニュアルを利用できていない組織は、そもそもマニュアルを使っていこうという意識が浸透していません。

例えば、マニュアルを作って終わりで、業務に組み込まないことが最たる例です。例えば、上場準備会社において、勘定科目要領等の規程などを形式的に作成をしても、それらを業務に用いないことから結局形だけになってしまうことがよくあります。つまり、組織全体でマニュアルを利用していこうという意識がなければ、はじめにマニュアルを整備したとしても、だんだんと使われなくなっていきます

使われて初めて、「マニュアル」の意味を成すのです。

使われるようになるコツ

業務に組み込むことを考える

マニュアルの利用は必ず業務に組み込んで行くことが大事になります。

例えば、月次決算を行う時に、チェックリストを用いて進捗管理を行うのであれば、期限までに何をするべきなのかわかりやすくなるでしょう。

また、月次のルーティン業務などについては、リマインダーを兼ねたワークフローを設置して、期限内に間に合わせることが出来るようになると思います。

弊社では、源泉税の納付手続きを忘れないために、クライアントごとにワークフローを設置して、これに従って作業を行うようにしております。

周りを巻き込みながら作っていく

マニュアルを1人で作っても、周りの人は「そんなものがあるなんて知らないよ」となってしまうかもしれません!

しかし、周りの人を巻き込めば、「こういう作業も実は反映させないといけない」「これも加えよう」と自分ごとになっていきます。

たたき台として一人で作成することは問題ないですが、たたき台は叩かれてこそ価値があるのです。マニュアルを作ったらなるべく多くの人の目に見えるようにして、多くのフィードバックをもらいながら更新していきましょう。

率先してリーダーが使っていく姿勢を見せる

ここまででも書いてきましたが、どんなにいいマニュアルを作っても使われなければ意味がありません。しかし、現場の人間が「さぁこれを使え」と言ってもだんだんと意識が薄れていってしまいます。

だからこそ、リーダーが率先してマニュアルを使いましょう。リーダーが仕事の中で使うと、「これはやらなきゃ」というイメージを持つはずです。

定期的にマニュアルを見直していく

仕事は法令や環境などを含めて常に変化していくものです。せっかく作ったマニュアルもビジネス環境や現場に合わなくなっていくことがあります。そこで、定期的に見直しをして陳腐化を防ぐ必要があります。

目の前にある問題にはすぐに取り組む意識を持ってもらうためにも、マニュアルは定期的に見直すべきです。

マニュアルに完成はありません。できるだけリアルタイムで更新していき、常に最新に保って使われるようにしていくのが大事になるでしょう。

マニュアル例

以下は、サンプルですが弊社にて税務申告書をレビューする時のマニュアルの一部になります。

例えばですが、マニュアルには以下のような事項を定めております。

  • 必ず印刷をして申告書をチェックすること
  • 適宜必要な証憑と突合を行うこと
  • 数字の参照はかならずソースデータと当てること

また、決算書作成後にはチェックリストを利用することで、典型的なミスを防ぐためのポイントを押さえるようにしております。そのため、弊社ではレビューの前に必ずチェックリストと照合をすることをルールとしております。

まとめ

マニュアルを整備・運用するのは大変なことです。しかし、マニュアルを利用するメリットは大きく、組織拡大や風土醸成にも大きく影響します。

マニュアルを整備・運用していくのはテクニックだけじゃなく、経営者のやる気も大きいです。経営者は生半可に作業が出来るケースが多いことから、マニュアルを充実化させるインセンティブが少ないのかもしれません。しかし、組織拡大のためにはノウハウを引き継ぐことが最重要になります。

自分の会社でマニュアルを活用したい!と考えている方は、ぜひ気合を入れて!頑張ってほしいです。

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