DXとは
DX(デジタルトランスフォーメーション)は、経済産業省の作成した『「DX 推進指標」とそのガイダンス』によると、以下のように定義されています
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること
DX 推進指標
重要な点は、「業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し」という部分であり、これらを満たすための変革をデジタルを活用していかなければ、DXとは呼べません。
なぜ中小企業ではDXを進められないのか
中小企業でありがちなシステム体制
中小企業においてシステム化を全く行っていないかというと、そういうわけではない。
むしろ、数十年続く中小企業においては、過去にシステム導入や設備導入等の投資を行ったことがあることも多いのである。
例えば、数十年前に地方のITベンダーに依頼をしてシステム構築を行い、各種現場の要望に応じてシステムをカスタマイズして、その企業の個別の業務に最適化したシステムを構築することもあっただろう。
また、同様に当時の従業員がAccessやマクロを用いてシステム構築したケースもあるだろう。
しかし、システムは作成して終わりではなくメンテナンスをする必要がある。
数十年もシステムを利用してる間に、ITベンダーの担当者が退職する、システムを開発した担当者が退職して完全なブラックボックスになってしまうことも多くの企業で発生している。
中小企業にありがちなマインド
中小企業のみではないが、システムに関して外部専門家や分かる人に丸投げをすることはありがちである。また、特に家族経営の企業の場合は現状維持バイアスが働くことで、長年勤務している従業員がオペレーションを変えることを拒否することも多い。
そのため、事業承継を行ったタイミングで業務改革を行おうとしても、既存の従業員による反発で業務改革が進まないという例も実に多い。
一般的にゼロイチで仕組みを作成することよりも、既存システムを置き換えることのほうが負担が大きいのは、既存の従業員や仕組みを変えることによる努力が必要だからである。
システム刷新のための手法
システム刷新を阻害する要因
レガシーシステムの阻害要因は、以下の通りである。
①複雑化したシステム
複雑化したシステムに対応をするというのが、システム化の一番の阻害要因である。
これは先程も説明したとおり、当初作成したシステムに継ぎ接ぎで機能を追加したこと・作成者しかわからないブラックボックス化したことによる弊害です。
②IT投資の増加、予算確保
こちらは複雑化したシステムに対応するためにかけるコストが該当します。
現代においては安価なSaaSが存在するため、安価でIT化をすすめることが可能なはずですが、複雑化した業務にシステムを合わせるために非常に高値のIT投資を行うなど、無駄にコストをかけてしまうことがあります。
システム刷新のため対応策
①業務自体の見直し
システム刷新のためには、真っ先に業務自体の見直しを行う必要がある。なぜなら、元々の業務が整っていないのにシステム化を行っても、システムが複雑化するのみならず効果が減少するからです。
元々システムは決められた業務を反復的・継続的に処理することが得意であり、複雑な分岐やなどに適切に対応をすることは得意でない。仮に過去にそうだったとしても、裏で人間が無理やりカスタマイズを行うケースがほとんどであり、システムの効果的な使い方とは言えません。
まずシステムを導入する前には、必ず既存業務自体を整理・見直しを行い、不必要な業務を無くす必要がある。そうやって業務を見直した結果、結果的にシステムを入れる必要が無くなるかもしれないが、結果的に業務が効率化されることになるでしょう。
②システムに合わせた業務設計
業務を見直した結果、やはりシステム導入が必要だと判断したとしましょう。
システム導入の際には、業務にシステムを合わせるのではなく、システムに業務を合わせにいくことを推奨します。なぜなら、システムの得意技である反復的・継続的な業務処理をフルに活かすためには、システム本来の持ち味を活かすことが大事だからです。
③業務刷新のための腹決め
①及び②を実践するためには、経営者自身が強い意志を持って業務改善及びシステム開発にコミットをする必要がある。業務改善等は基本的には現状維持バイアスが働くことから、強い意志を持って実行をしないと頓挫する可能性が非常に高いです。
そのため、DX推進を行うためには、絶対にやり遂げるという強い意志を持つことが非常に重要です。
④相談できる人をきちんと配置する
こうしたシステム導入には、専門知識のみならず業務の理解などが非常に求められます。
そのため、突然ベンダーを採用するよりも、日常的に相談できる人を置いておいたほうがスムーズに進むことが多いです。
中小企業白書によると、経営者の日常的な相談相手として最も多いのが、税理士・公認会計士と記載があります。そのため、システムに明るい公認会計士・税理士と定期的にコミュニケーションを取れるとシステム導入等が非常にスムーズになるかと思います。
さいごに
既存業務の立て直しというのはやはりとても大変なものです。
MOTHER2の開発が難航したタイミングで、当時のHAL研究所社長(後の任天堂社長)である岩田聡さんが、糸井重里さんに言った言葉が以下の通りです。
いまあるものを活かしながら手直ししていく方法だと2年かかります。イチからつくり直していいのであれば、半年でやります
https://www.1101.com/nintendo/mother2_wiiu/2013-03-18.html
岩田聡さんの天才ぶりを表すエピソードではありますが、実は既存のものを活かしながら手直しを加えることはとても大変ということを表している面もあるかもしれません。
また、上記でシステムに明るい公認会計士・税理士とコミュニケーションを取ると良いと記載しましたが、税理士の平均年齢はなんと65歳であるため、普通の税理士や会計士ではITに関する相談は難しいかもしれません。
会計の専門知識のみならず、システムのオペレーション構築まで相談できる会計士・税理士を探すのは難しいかと思います。
当事務所では会計・税務処理だけに止まらず、システム監査技術者の資格を有している専門家がいることから、業務プロセス改善・システム導入・IPO支援に強みを持っています。
長期的に会社を存続させるにはシステム環境の構築が非常に重要です。もしシステムにお困りの会社さんは、お気軽にお問い合わせください。