はじめに
昨今は楽天グループやバンダイナムコでの横領事件など、様々な企業で問題が発生する姿がニュースになっている。本来なら監視が行き届いていれば防げたかもしれないが、組織が一定の規模を超えてくると経営者のみでは社内体制をモニタリングすることはおろか、細かいオペレーションに目が行き届かなくなることが当然ある。それを防ぐためには内部統制の整備及び構築が求められる。
本稿では、内部統制ってなに?内部統制を導入したいけど、何をすればいいの?といったように、内部統制に関する知識がほとんどない方が、内部統制がどんなものか雰囲気を掴んで貰えるための記事になります。
なるべく厳密な言葉を使わないようにしているため、厳密性についてはご容赦いただけると幸いです(Twitterの専門家さん、たたかないでね)。
内部統制はなぜ導入すべきなのか
そもそも内部統制とは
内部統制とは、超サックリいうと、企業が効率的に動けるように業務に組み込まれ、組織全員で運用されるプロセスを指します。
例えば、マクドナルド等の店員の作業マニュアル・ハンバーガーを効率的に提供するためのマシンの操作方法・POSレジ等の活用などは、業務の効率化のために行われる仕組みとしてイメージがつきやすいと思います。
そうすることで、わざわざオーナー等が監視をしなくても、アルバイトレベルの従業員が現場の店長に従うのみで、一定レベルの品質のサービスを提供することが可能になるのです。
企業が大きく段階では、なるべく属人化を減らし、オペレーションを一定のクオリティで確保できるような仕組みづくりが求められるようになるのです。
なぜ内部統制が必要なのか
それは、「会社が大きくなったら業務の全ての品質を経営者のみで確保することが難しくなるから」です。
はじめは経営者の目の届く範囲で会社は回るかもしれません。しかし、人数が増えたり、部署を複数設置するようになると、すべての業務を経営者が把握することは現実的でなくなります。業務の大枠は理解していても細かい部分までチェックできることは到底不可能といえるでしょう。
また、1人が行っていた作業を複数人で行うことになった場合、マニュアルが存在しない場合には、作業内容がバラバラになったり、より時間がかかってしまうことがあります。これは作業内容を個人の能力に頼っていたり、人数が増えたことで文章等に残していない「暗黙の了解(ノウハウ)」が共通認識とされなくなることが原因です。
よって、「ルール作り」のみならず「ルールをきちんと運用するための仕組みづくり」が大切となります。これが「内部統制」です。
また、余談ではありますが、こうした問題は組織の人数が30人を超えてくるあたりで顕在化しがちです。これが「30人の壁」とよばえる、企業の従業員数が30人程度になると、経営上の課題が増え、成長が停滞する現象を指します。
個人が直接対話できる人数は限定的なため、人員が増えると情報伝達と経営意識の共有が困難になります。それを防ぐために、30人程度の従業員数担った場合は組織づくりが重要になってきます。
余談ではありますが、現在の小学校の1クラスは30人程度が主流です。これは教師1人が把握できる人数の限界が30人程度と呼ばれているからのようです。
内部統制を導入しないと起こる問題
以下は内部統制を整備・運用しないことによる問題の具体例です。これらの例に該当しなくても、今会社でどのような問題が起こるのかを考えてみるとよいでしょう。
- 複数店舗経営を実施しているが、各店舗で盗難防止策などをきちんと行っていないことから
- 現金の横領や在庫の着服といった問題点が生じる
- 請求書の支払件数が数十件から数百件に増加したにもかかわらず、規模が大きくなったのに請求書・支払入金の管理を1人で行っている
- 請求書の回収などが追いつかないことから支払漏れが頻発する
- 銀行口座の承認プロセスなどを行わないことで、架空口座への支払による横領が行われる
- 売上や取扱商品・取引先が増加したが、分析できる形でデータを保管していない
- 手探りの経営、より有効な営業に結びつかない
- 経営者の勘だけでは販売件数を予測しきれず、売上の伸びにつながらない
- 在庫のロスにつながる
まず何をすればいいの?
会社がいつ頃から・どの程度大きくなるのか見当をつける
内部統制は会社の規模によって求められる程度が異なります。将来上場を目指しているならば、高いレベルでの整備が必要となります。
また、いつ頃までにどの程度の整備をしておくのかを考えながら行動することで、よりスムーズに整備を進められます。
どのような問題があるか見当をつける
「どのような問題が発生するか」 なかなかイメージが沸かないと思います。
問題が起こった会社の体制を調べるという方法もありますが、出てくる情報は大企業の不正事例が多いです。
うちの会社では参考にならないよ!そんな場合は…
会計士に聞く!
公表される情報は専門家の意見を反映した後のものが多く、不備があったとしても修正されていることが多いです。
しかし、会計士はその修正前の状態を見ているため、中小企業にありがちな不備をいろいろ知っていることでしょう。
着手すべき課題を洗い出し優先順位をつける
- ヒアリング
- 全部門にヒアリング
- 社内業務・業務フロー把握
- 上記の可視化
組織が大きくなってくると、業務の内容は把握できていても、詳細は見えなくなってしまいがちです。
また、複数部門を跨ぐ業務フローが多くなります。そこで、経営者は俯瞰的に業務フローを把握することが必要となります。
だからこそ、全部門に対してヒアリングを実施して、課題感や問題点を洗い出すことで内部統制の整備における要点が見えてきます。
まず、業務フローを手書きでいいので書き出してみましょう!
上のフローチャートを清書した形が下の図です!
- すぐに着手できる小さな改善を積み重ねる
いきなり難しいことをしようとすると、 「なかなか進まない… 内部統制ムズカシイ….」 なんてことになりかねません。
内部統制に「完璧」はありません。できることからやればいいのです。
内部統制導入、なぜ挫折するのか
内部統制の導入にあたって、挫折してしまうことがしばしばあります。
先人の失敗を知り、内部統制導入を成功させましょう!
挫折する原因として以下のようなものが挙げられます。
- 経営者の内部統制のやる気が伝わらない
内部統制の目的を達成するためには、経営者が「これは本当に必要なことなんだ!」とメッセージを伝えることが重要です。 そのためには、内部統制を「小難しい上場準備のための課題」程度に思わず、会社を大きくしていくためのプロセスだと思うことが重要です。 特に、業務の有効性及び効率性を達成するための方法は何か?それを実現するためには何をすれば良いのか?属人化を防ぐためには何をするか?ということが重要だと、組織のメンバーや幹部に常に伝えていくことで、組織のメンバーがそれらを考えて実行していくことが出来ます。 - 経営者が担当者にまるなげ
IPOを目指す会社にあるあるなのですが、内部統制は上場のための課題としか認識しておらず、経営者が本当に目指すべき課題解決に繋げて検討しないことがあります。 そのため、プロセスをきちんと浸透させるために、経営者が目配りをしなければなりません。 - 部下が必要性をわからずにやらされて、めんどくさくなる
これもあるあるなのですが、担当者が内部統制をただ構築して終わりです。きちんと運用のことまで考えないで内部統制を構築しても結局破綻することになるため、運用サイドと話し合いながらきちんと業務プロセスを構築することが重要です。
要約すると「ルールを作りっぱなしにするのではなく、きちんと浸透させるための努力を組織全体で行おう!」ということになります。
経営者のやる気をみせる!
内部統制を導入するにあたり、従業員の協力は必要不可欠です。
経営者の内部統制導入に対する姿勢は従業員によく伝わります。
経営者が大手を振って、積極的に導入の意志を伝えることが大切です!
経営者が全ての「ルール作り」を行うというよりは、「ルールが運用されているか見張る」という意気込みでもいいと思います。
内部統制への協力姿勢を評価制度に組み込むという方法もあります。
部活の顧問というイメージができるかもしれません。
まとめ
本稿を読んでいただきありがとうございました。
内部統制を整備・運用を進めるきっかけになっていただけると嬉しいです。