【小売店・飲食店オーナー必読】小売店における従業員不正の手口と対策

はじめに

2024年10月にブックオフホールディングス株式会社が、店舗で発生した横領等に関する報告書を公表しました。不正には、粉飾決算などの会社規模で行われるものもありますが、アルバイトがレジのお金を着服するような従業員レベルの不正も含まれます。

不正はどんなビジネスモデルでも起こりうるものですが、飲食店や小売店はどうしても店舗のモニタリングが行き届かなくなる傾向があることから、従業員不正が発生しやすい業種です。筆者自身も小売業や飲食店の監査経験がありますが、様々な手段で従業員不正が行われることがあります。

そこで、本稿はブックオフの事例を基に、「小売での不正」の手口と対策を解説していきます。

不正の手口

小売業の特徴として、複数の店舗を展開していることから各店舗に責任者(店長など)をおいてさまざまな権限を譲渡する場合が多いことがあります。そのため、経営者は各店舗の細かい業務内容まで把握しきれないことが多く、不正が発生する隙が生まれてしまうことがあります。

また、アルバイトなど多くの従業員を採用することから、不正や横領をするような人間が紛れ込んでしまう可能性が必然的に高くなります。

そのため、小売業では、組織的な不正(会社の利益に直結するもの)よりはむしろ、「レジの現金を盗んだ」というような個人的な利得を目的とした不正が発生しやすくなります。筆者が見ていた小売業でも従業員不正が多く、経営者も頭を抱えていることが多かったです。

そこで、どのような不正が行われるのか、事例を紹介してみます。

商品仕入時

架空仕入

実際に商品を仕入れていないにもかかわらず、架空の仕入登録を行い、代金にあたる現金をレジ・金庫から持ち出して横領することが当てはまります。

普通だったら「仕入れた商品は在庫管理システムなどで管理しているんじゃないの?」と思うかもしれませんが、ブックオフの場合は「部門品」とよばれる、商品を同一部門ごとでひとまとまりに管理している商品があることから、個別での管理を行っていなかった不正が気づかれなかったようです。

商品管理を適切に行うことで気付けることもあるかと思いますが、そのための仕組みを

仕入の水増し

実際の仕入数量・金額よりも大きい数量・金額を仕入登録し、代金の差額の現金を横領する手段になります。

これは中古品ゆえ、売却者と店員が結託することで、仕入の水増しを行うことが出来たのかと思います。このような形でアルバイトが外部の人間と結託する事例があると考えられるため、メンバーは

商品管理・棚卸時

商品持ち出し(窃盗行為)

店舗従業員による店舗内在庫の窃盗行為が考えられます。顧客からの盗難については防犯ブザーなどの対策を行うことが多いですが、従業員はシステムの抜け穴などを探って横領を行う可能性があるため

棚卸偽装

実地棚卸により帳在差異が発生した際、現物がないにもかかわらず在庫があるように偽装する(棚不足の場合)、又は、実際の実地棚卸の結果よりも少ない数の在庫数を棚卸結果として入力することになります。棚卸によってシステム上の残高と実地残高の一致を確かめるものになってますが、スタッフに権限を移譲していることから、本部などが気づくことが難しくなっていると思います。

現金管理

現金着服

レジや金庫から現金を取り出したり、顧客とのやり取りの際に現金をレジ・金庫に入れないなどして、売上を着服する例です。

これはよくある手段であるため、多くの店舗がレジ周りにカメラを置いたり、現金実査を行うなどの報告を行うケースが多いかと思います。

対策~構築すべき内部統制~

先ほどの段落で、様々な不正事例を紹介しました。これらはごく一部であり、ブックオフの事例を見れば、様々な巧妙な手口で不正を行っていることに驚くかと思います。

不正は様々な巧妙な手段を用いることから、不正を防止・発見するために、内部統制の構築が重要となります。今回の場合だと、従業員などが横領や盗難などをしないための予防や発見といったオペレーションがこれに当てはまります。

どのような内部統制を構築すればよいのか見ていきましょう。

仕入時の牽制機能

発注・現物確認・精算を分担

不正やミスを防ぐためには、業務の実施者とレビューを行う者を分けることが基本になります。例えば、発注一つにしても、以下のように複数の担当者で役割分担を行うことで、不正や横領の兆候に気づきやすくなることがあります。

  • 発注する者

  • 発注と届いた個数が一致しているか確認する者

  • 発注額と実際支払額が一致しているか確認するもの

不正や横領をされやすい会社の特徴として、一人の人に業務を任せすぎるというものがあるため、適宜モニタリングを行うことが重要と考えられあmす。

取引先リストの確認 (架空買取防止)

架空の取引先との取引を防ぐために、取引先の実在性を必ず確認するようにしましょう。

例えば、登記簿や身分証明書などを用いて会社の実在性を確認する、過去の取引記録を閲覧するといったかたちで、実在性を確認することが重要です。

架空の取引先を用いた不正は様々であるため、ここは基本だけど大事です。地面師たちみたいになるから・・・。

棚卸時

棚卸のルール徹底

棚卸は直接現金を出し入れするわけではないため、軽視されがちです。 しかし、BOOK OFFでの不正発覚のきっかけが在庫差異であったように、棚卸は不正を防止・発見する重要な業務です。 そのために、棚卸のルールを確立し、それが遵守されるようにしましょう。

例えば、棚卸を行う時は以下のような体制を行うケースが多いです。

  • 複数人で行う(ダブルチェック):特定の個人で行うよりも不正しにくく、ミスも予防できます。
  • 店舗外部者(他社・上長)を含める :店舗内のもの同士で共謀して不正を行うことを防ぐことができます。 社外のサービス等を利用すれば、対外的な信頼度も高まります。

店舗数や在庫数が多いほど棚卸は一大イベントになることから、適切にオペレーションやマニュアルを組むことが大事でしょう

現金管理

現金管理のルール徹底

小売店での不正の「目的」となりやすいのが現金です。 小売店では、現金が頻繁に出入りし、アルバイトのような短期従業員でもレジ業務などを通じて触れることができます。 そのため、現金管理のルールを周知・徹底することが重要です。

例えば、小売店における現金管理の場合は以下のようなオペレーションを組むことが多いです。

  • 釣り銭と売上金は明確に区別する
  • 入出庫の記帳 現金の補充や引出しを行う際は、以下の情報を記入する
    • 氏名
    • 日時
    • 金額
  • レジ締の作業は最低毎日。できれば一日に複数回行う。可能であれば複数名または当番制で行うことが望ましい
  • レジ付近やバックヤード・マネージャールームに向けた防犯カメラの設置、定期的なチェック
  • 売上金を本部に送金するときには、必ず二人一組で銀行に振込を行う

まとめ

以上、小売店で起こりやすい不正の手口、及びその対策をまとめてみました。

小売店で扱う商品は1つ1つの金額が小さいものが多く、「1つくらい」「少しくらい」と考えてしまいがちです。しかし、会社側はそのような不正を少しでも減らすために、より強度な内部統制の構築を進めていきましょう。

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