経営者、経理担当者の方々は確定申告の時期や決算期になると、情報整理に追われてかなり忙しくなられるかと思います。
そのような中、問題として浮上するのが会計士・税理士等(専門家)と経営者、経理担当者(納税者)のフラストレーションです。
筆者も公認会計士・税理士として日頃からこの問題意識を抱えており、公認会計士及び税理士仲間や経営者にお話を聞いてみると、フラストレーションの根本原因はかなり似ていることに気づきます。
それは何かというと、納税者・専門家の一方が悪いというわけではなく、「お互いが何を求めているのか、何をしてほしいのかを理解していない」ということです。
一体どういうことでしょう?今回は公認会計士及び税理士である著者の経験はもちろん、
公認会計士及び税理士仲間や経営者にお話を参考に、納税者と専門家の関わり方について解説をしていきます。
納税者と専門家がお互い感じること
冒頭にも記載させていただきましたように、フラストレーションの根本原因は「お互いが何を求めているのか、何をしてほしいのかを理解していない」ことがほとんどです。
そして納税者側・専門側が「何を求めているのか、何をして欲しいか」を探るのが難しいのです。
具体的には、以下の部分がそれに該当すると考えられます。
ギャップが生じているポイント | 納税者目線 | 専門家目線 |
---|---|---|
相談内容 | 税金以外の相談していいのかわからない | 税金以外の相談も受けたい |
コミュニケーション方法 | コミュニケーションが取りづらい | |
情報伝達 | 試算表が出てこない | 資料の提出をしてくれない |
こまめなアウトプットが出てこない | こまめに資料を出してくれない | |
出来上がりの数字の説明をしてくれない | 資料が出てこないから数字が出せない | |
報酬面 | 報酬の割にサービスが悪い | 報酬に見合わない要求が多い |
それでは、次の段落では専門家との目線のギャップが生じる理由と、それを防止する方法について記載していきます。
それぞれギャップが生まれているポイントを「背景」「埋める方法」「税理士の選び方」の3軸でまとめておりますので、是非ご一読ください。
「何を相談して良いか」よくわかっていない(相談内容)
ギャップが生じている背景
納税者と会計専門家の間で一番ギャップがある部分は、「会計や税金以外の相談を行ってよいか」になります。
特に納税者の目線からすれば、経営を行っていく中で「悩んでいるんだけど誰に相談したら良いかわからない」というケースはかなり多いかと思います。
例えば、給与計算などの労務関連に関するご相談や、キャッシュを潤沢にするための資金調達等のご相談、会計に伴うシステム導入のご相談などです。
社内のみで解決できないケースにおいては外部の専門家に相談することになりますが、誰にどうやって相談をすればいいか悩むときがあると思います。
ギャップを埋める方法
このようなギャップを埋める方法として、まずは「会計専門家にとりあえず相談する」のがオススメです。
ですがどのように相談すれば良いのか。本当にざっくりで良いので「給与計算が大変なんだよね、、」「もっとキャッシュ増やしたいんだよね、、」くらいで大丈夫かと思われます。
なぜなら会計専門家は様々な規模の企業の問題に携わるケースが多いことから、
納税者が悩んでいるトラブルについても何らかの形で関わっている機会がある可能性が高いからです。
また、顧問の専門家によっては、会計税務以外の幅広い知識を有しているケースも多いため、
とりあえず相談したら解決方法を提案してくれるケースもあれば、
人脈が広い専門家である場合は、適切に解決をできるような人を紹介できる可能性が大きいと考えられます。
税理士の選び方
上記の内容を鑑みると、以下のような目線で会計士・税理士を選ぶのがおすすめです。
- その人特有の専門能力を持っているか。その人でないとダメな理由があるか
- 会計・税務以外の相談にも気軽に乗ってくれそうか
- 会計・税務以外の幅広い知識を持ってそうか
- 人脈が広いか
ギャップを埋める方法にも記載させていただきましたが、まずは「会計専門家にとりあえず相談する」がオススメです。
そのため、経歴や実際に会話を重ねて、色々フランクに相談できそうな方をパートナーにしてみると良いでしょう。
コミュニケーションが円滑に取れない(コミュニケーション方法)
ギャップが生じている背景
次にギャップが生まれやすいのは「コミュニケーション方法」です。具体的にお伝えすると、遠方に住んでる、メールが使えない、SlackやChatworkで簡単にやり取りができない、といったITに疎い理由でコミュニケーションが円滑に取れないケースも正直ございます。
なぜなら、日本税理士連合会のデータによると税理士の年齢割合で最も多いのは60歳代だからです。また、ある程度チャットツールに慣れている20歳~30歳代は11%くらいしかいないのです。
出典:日本税理士連合会
前述したようにコミュニケーションにおける専門家に対する一番のギャップは、「相談したいんだけど迷惑かもしれない・相談しづらい」といったことです。
ですが、専門家目線としても納税者側から相談を情報を得ることはメリットしかありません。具体的には以下のメリットがあります。
- 企業の情報をキャッチアップすることができる
- 会話の中で隠れていた問題に気づくことができる
- 納税者との関係が作れる
しかし、お互いの信頼関係と情報がアップデートされないことにより、円滑にコミュニケーションが図れていないこともあるのが現状です。
ギャップを埋める方法
コミュニケーションにおけるギャップを埋める方法は、契約前の段階で、お互いのコミュニケーション方法、人柄、ネットリテラシー等がマッチするかを理解することです。
仮にここがマッチしない場合はやり取りのしづらさが発生してしまうでしょう。
税理士の選び方
- 話していて人柄がマッチしそうか
- ネットリテラシーや問題意識が自分と近いか
- コミュニケーションの頻度が高そうか・低そうか
ネットリテラシーをチェックするのは少々難しいように思えるかと思いますが、
最初は「コニュニケーション手段はこの方法で大丈夫ですか?」「どれくらいの案件数を持っていますか?」など、
ざっくりとヒアリングすることで剪定ミスが格段に減らせるでしょう。
経理情報の伝達がうまくできない(情報伝達)
ギャップが生じている背景
次にギャップが生まれやすいのは「経理情報の伝達」です。
コミュニケーションと似ている部分ではありますが、経理情報伝達がスムーズか否かが非常に重要です。
大前提として、専門家が試算表や決算情報などのアウトプットを提供するためには、納税者からきちんと情報を入手することが必須です。
しかし、何らかの要因で情報がスムーズに集められない場合は、クライアントに対してアウトプットを提供できず、結果的にクライアントに支障が出てしまいます。
逆にクライアントから急にアウトプットを求められたとしても、前提となる資料が無ければタイムリーに提供することが不可能になり、必要な時に情報を提供することが出来なくなってしまいます。
そのため、必要な情報を網羅的に提供するための方法をお互い用意する必要があります。
ギャップを埋める方法
そのギャップを埋めるための方法としては、前述したコミュニケーション方法に関する章と似ており、
ネットリテラシーやコミュニケーション頻度など、納税者と生じる普段のやり取りを鑑みた上で、情報伝達方法を決めていくことをオススメします。
税理士の選び方
- Slack, Chatwork, メールなどのテキストコミュニケーションが出来るか
- Google Drive等のオンラインストレージ等で情報をやり取り出来るか
- クラウド会計に対応しているか or 会計ソフトが選べない
- 適切な情報のやり取り方法を提案してくれるか
- 紙のやり取りは最小限か or 多いか
- 訪問や対面でのコミュニケーションが必要か or リモートで大丈夫か
ここに関する提案を専門家側が行わない場合は、少し警戒した方が良いでしょう。
報酬とサービス期待値が合わない(報酬面)
ギャップが生じている背景
最後にギャップが生まれやすいのは「報酬面」です。また一番トラブルの原因になってくるのは、報酬面だと思います。
報酬額は時間単価をベースに決定するため、基本的には想定稼働時間の範囲で業務を決定することになります。
顧問料の場合は固定報酬である場合が多いですが、こちらも作業単価と想定稼働時間をベースに提示することが殆どです。
報酬額 = 時間単価×稼働時間
報酬を下げるためには、時間単価を下げるか、稼働時間を下げるかの二択になります。
時間単価を下げる場合だと、時間単価の低い無資格者や経験の浅いメンバーをアサインすることで稼働を調整することになるため、クオリティの低下につながることもあります。
逆に稼働時間を下げる場合だと、サービス範囲を狭めるなどで稼働を調整が行われます。
ギャップを埋める方法
ギャップを埋めるためには、自分が求めるサービス内容を判断したうえで、最適な顧問税理士を選ぶことです。
「料金が安いから」という理由だけで専門家を選んでしまうと、安物買いの銭失いになるケースも起こってしまいます。
したがって、料金だけではなくサービス内容等で選ぶことが重要です。
税理士の選び方
- 納税者の求めるサービス内容は何か
- それに見合う金額でサービスを得られるか
- 品質をどこまで求めるか
こちらもまずは「会計専門家にとりあえず相談してみる」がオススメです。
経歴や実際に会話を重ねて、最も適した関わり方を模索できる専門家をパートナーにすると良いでしょう。
専門家と納税者は密な情報連携が不可欠
ここまでで税理士と納税者に対するギャップの要因と埋める方法・税理士の選び方について記載してみました。
この記事を読んでいただいた方は、
- 相談内容・コミュニケーション内容・情報伝達方法の3つについては、直接税理士とやり取りをしたうえで最適な人を選ぶのがおすすめ。
- その上で自分の予算に見合った人を選ぶのがおすすめ。
ということがわかっていただけたかと思います。
しかし、日常の業務をこなしつつ、上手に専門家と関わることは非常に大変ですよね、、
当事務所では会計・税務処理だけに止まらず、システム監査技術者の資格を有している専門家がいることから、業務プロセス改善・システム導入・IPO支援に強みを持っています。
長期的に会社を存続させるには盤石な会計・ファイナンス体制は不可欠です。
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