はじめに
DX、デジタルトランスフォーメーションの時代が到来しており、イノベーションを推進する鍵として、データの活用がより一層重要視されています。しかしながら、多くの議論がデータの解析や活用法に焦点を当てている反面、実は「データの貯め方」についての考察が不足しているのが現状です。そこで本稿では、データ活用の目的、データ活用のために作るべき体制について解説を行います。
データ活用はなんのため?
データ活用とDX
経済産業省が発行する『DX推進指標とそのガイダンス』において、DXの定義は以下のように示されております。
DXとは「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、 業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」
すなわち、データやデジタル技術を活用して企業を強くすることです。
それでは、データを活用するとはどいうことでしょうか?データの活用の目的として、以下のようなものが挙げられます。
- 意思決定の精度向上:過去のデータや現在のトレンドを元に、未来の予測や戦略的な決定を行うため。
- 効率の最適化:運営コストの削減や業務の効率化を実現するため。
- 顧客体験の向上:顧客の嗜好や行動データを基に、よりパーソナライズされたサービスや商品を提供するため。
- 新たな価値の創出:データを元に新しいサービスや商品を生み出し、競争力を向上させるため。
- リスクの低減:事前に潜在的なリスクを特定し、それを回避または最小化するため。
これらの目的を達成するためには、ただデータを集めるだけでなく、それを正しく解析し、有効に活用する必要があります。
データ活用は経営者の勘をより強固なものとする
長年事業を続けてきた経営者は、自らの豊富な経験と勘を頼りに事業を推進してきたことから、ビジネスの感覚が研ぎ澄まされてきてます。実際、「データだけでは見えない何か」を感じ取るこの勘は、過去の事例や経験の積み重ねから磨き上げられたものです。
一方で、DXやデータ分析は、過去の事実や数字に基づき最適な意思決定をサポートするツールとして存在します。これは、**経営者が過去の経験をもとに形成される勘と非常に似ています。**データ分析は、過去の情報を詳細に積み重ね、それを分析することで最適な答えを導き出そうとするアプローチであるからです。
だからこそ、経営者の勘とデータ活用は相反するものではなく、むしろ互いを補完します。経営者の勘にデータ分析の示唆を加えることで、その判断の正確性や信頼性は飛躍的に向上します。
結論として、経営者の勘とデータ活用の双方を組み合わせることで、事業の成功への確実性は格段に高まるでしょう。過去の情報や経験を最大限に活かし、未来を切り開くための最強の武器を手に入れられることになります。
データ活用においては「すぐやれる」が重要
DXは経営者の力をより強化するものという解説を聞いたら「すぐにやってみたい!」と思うかもしれません。しかし、データ分析を行いたくなったときには、以下の点を少し考えてみてください。
- データを分析したいときに、データはすぐに入手できますか?
- データを入手出来たとしても、すぐに分析に移れますか?
ここでお伝えしたい点は、データを使いたい時にすぐに使えるようにしないと、結局活用をやめてしまうということです。例えば、お菓子を食べたいと思ったとき、すぐに手の届くところにあれば食べることができます。しかし、取り出すのに時間がかかったり、調理が必要だったりすると「面倒だから別に食べなくていいや」となってしまうでしょう。すなわち、すぐに実行できるということはアクション実行を誘発するということです。
データも同様です。分析や活用を行いたいと思ったときに、すぐにアクセスできる状態にあると、その動機やモチベーションは維持されやすいのです。
すぐやれるようにするためには
1. どのような示唆を得るためにデータ活用すべきか考える:
何のためにデータを使用するのか、その目的を明確にします。例えば、売上分析をしたい、 顧客の動向を把握したい、天気ごとの来客数を予測して仕入数量を決めたいetc…
それぞれの目的に応じて、必要なデータの種類や形式が異なるため、どのような示唆を得たいかをまず考えてきましょう。データ活用をするためには、まずはその目的から考えましょう。
2. 必要なデータを逆算する:
目的を元に、具体的にどんなデータが必要なのかをリストアップします。このステップで、不要なデータの収集を避け、効率的なデータ収集が可能となります。
3. データを貯める方法を考える:
データの収集方法を計画します。例えば、オンラインの顧客行動データであれば、ウェブアナリティクスツールを使用することが考えられます。一方、オフラインの店舗での顧客行動データであれば、センサーやカメラなどの技術だったり、POSレジに顧客情報を貯めることなどを考えるでしょう。
この段階ではなるべく「システムを用いてデジタルデータが集まる仕組みを作ること」が望ましいです。なぜなら、システムであれば人間と違いモチベーションや体調に左右されずにキレイなデータを集めてくれるため、データ活用のための下地を文句言わずにやってくれるからです。
4. 実際にデータを貯めてみる:
計画した収集方法を実際に適用し、データを収集します。この過程で、収集の難しさやデータの質など、新たな課題が見えてくるかもしれません。新たな課題が見つかった都度、定期的に改善を行っていくことで、データ活用の良いサイクルを回すことができます。
まとめ
DX時代において、データの活用は企業の競争力を左右する重要な要素です。しかし、その前段階として、適切にデータを貯めることが不可欠です。活用の目的を明確にし、必要なデータを逆算して収集することで、データの真価を最大限に引き出すことができます。
しかし、そのためのデータ活用のためには、データを積み上げる仕組みづくりをしなければなりません。
弊社では、システムに明るい公認会計士がデータ活用のための仕組みづくりのサポートをしており。もし興味のある方はお問い合わせください。
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