経理代行サービスの費用相場と、会計士が教える失敗しない選び方

経理代行サービスの費用相場と、会計士が教える失敗しない選び方

経理代行のアウトソーシングは、想像以上に幅が広い。無資格のフリーランスが月1万円台で請け負っているケースもあれば、公認会計士事務所が上場企業の経理体制ごと受け持っているケースもある。この差は何十倍にもなる。

問題は、外から見るとその「質の差」がわかりにくいことだ。タイトルが「経理代行」でも、担当者のスキル・対応できる業務の範囲・税務との連携可否は会社によってまったく異なる。

この記事では、経理代行の費用の決まり方と、外注先を選ぶ前に確認すべき論点を公認会計士の視点でまとめる。


失敗しない選び方

外注先に何を求めるかを決める

経理代行・記帳代行といったサービスの種類や範囲に、明確な法的定義はない。委託先によって対応できる業務はさまざまだ。ただ、大きく分けると「税理士が関与するかどうか」が最初の判断軸になる。

税務代理・申告書の作成・税務相談を有償で行えるのは、税理士法により、税理士のみと定められている。すなわち、税の相談と申告書作成は、税理士でなければできない(なお、税理士の資格なく税務相談等を有償で行うことは違法となるため注意してほしい)。

実際、法人の税理士関与割合は89.8%に達する(令和5事務年度国税庁実績評価書・財務省、令和6年10月)ため、法人はほぼ何らかの形で税理士が関わっているのが実態だ。

つまり、論点は以下のとおりシンプルになる。

  • 税理士が関与する外注先:税務相談・申告書作成まで同じ窓口でできる。経理サポートの範囲は担当者や事務所によって異なる。
  • 税理士が関与しない外注先:記帳・給与計算など経理作業の代行に限られる。税務は別途税理士に依頼が必要になり、二重コストになるケースがある。

どちらが合うかは自社の状況による。重要なのは「担当者が何をどこまでできるか」を事前に確認することだ。サービス名(記帳代行・経理代行・経理アウトソーシング)で判断するより、具体的な対応範囲を確認したほうが失敗が少ない。

何を任せたいかを決めずに外注先を探すと、安さだけで選んだ結果として、後から別の費用が発生する可能性がある。ゆえに、先に「自社が求めるもの」を整理することが最初の一手だ。

脳死での丸投げは失敗する

外注は人の代替になるが、仕組みの代替にはならない。例えば、経費精算のルールが浸透していない・請求書が期限通りに集まらない・営業データと会計データが連携していない──これらの問題は、担当者が社内にいても外注先になっても変わらない。

むしろ外注先は「提供された情報しか受け取れない」ため、社内の情報連携が壊れたままだと月次の締めは遅れ続ける。月次決算が遅い原因は経理部屋の外にあることが多い。外注に変えただけでは、その構造は変わらない。

外注先に品質の高い仕事をしてもらうには、発注側がオーナーシップを持つ必要がある。何をどのタイミングで渡すか・何を自社で管理するかを整理してから外注先を選ばないと、結果的に「外注したのに経理が不安なまま」という状態が続く。

経理代行の費用の決まり方

業務別の固定金額よりも、「自社の状況」によって大きく変わると理解したほうが実態に近い。主な変数は4つだ。

① 会社の規模(仕訳件数・従業員数):月次の仕訳件数が多いほど作業量が増えてコストが上がる。給与計算を依頼するなら従業員数も価格に直結する。

② 依頼するサービスの範囲:記帳だけか、給与計算・年末調整・決算申告まで含むかで大きく変わる。範囲が広いほどコストは上がるが、窓口が一本化されることで管理コストは下がる場合もある。

③ 月次の締め日・納期:月次決算の納期によっても値段が変わる。翌月5営業日以内で月次報告が欲しい場合、スピードと品質の要件が高くなるため料金が上がることが多い。

④ 資料提供のやり方:クラウド会計との連携で自動入力できる状態か、紙の書類を郵送するかで料金が変わる。オンラインストレージやクラウド会計での共有が整っているほど、コストは下がる傾向がある。

例えば、売上数千万の会社であれば、以下のような相場になることもある:

  • 記帳代行のみ(月次仕訳50〜100件程度):月1〜3万円
  • 記帳+給与計算+月次報告まで:月5〜15万円
  • 経理体制ごと受け持ち(税務・財務DD対応含む):月20万円〜

また、「安い外注先」には理由がある点に注意してほしい。安い外注先は価格を実現するために、以下のようなことがあり得る。

  • スコープが狭い(記帳のみ)
  • 対応スタッフが税理士・会計士でない
  • 税務相談は別途

見積もりを取る前に、自社の取引量・依頼範囲・期待する納期を整理しておくと比較がしやすくなる。


選び方のチェックリスト

外注先の種類によって、得意とすることがまったく異なる。自社のフェーズと照らし合わせて判断するのがよいだろう。

税理士事務所 vs 格安の記帳代行

格安の記帳代行が合う会社:

  • 創業初期で取引がシンプル
  • 税務申告は別の税理士に頼める
  • 月次のレポートは自社で読み取れる

税理士事務所がいい会社:

  • 税務相談・申告を同じ窓口でやりたい
  • 将来的に融資・M&A・IPOを視野に入れている
  • 担当者に高いスキルが必要になる場面がある(財務DD・連結対応など)

格安の記帳代行業者と税理士事務所を二重に使うと、コミュニケーションコストが上がる。窓口を一本化したいなら最初から税理士事務所系を選んだほうが効率的だ。

IPO・M&Aを視野に入れるなら「仕組みを作る」視点で選ぶ

将来的に融資・M&A・IPOを視野に入れているなら、「記帳ができる担当者」より「仕組みを設計できるパートナー」が必要になる。

実際、上場準備のフェーズで「元の税理士がIPOに対応していないため変更」というケースは珍しくない。経理代行だけでなく税務・財務まで一気通貫で相談できる体制があると、成長フェーズでも窓口を変えずに済む。月次決算を2週間から4〜5営業日に短縮した支援事例でも、最初から体制設計に関わることで、その後のM&A・上場子会社化をスムーズに進めることができた。

重要なのは担当者のレベルだ。記帳だけができる担当者と、IPO準備や財務デューデリジェンスを経験している担当者では、対応できる範囲がまったく違う。「創業期から成長期まで支援した実績があるか」を確認することが、選定の一つの軸になる。

外注先を選ぶ前に確認すべき6項目:

  1. 月次の締め日・報告タイミングに対応できるか
  2. 経営者が読んで判断できる形式のレポートが来るか(仕訳明細でなく損益・キャッシュ・KPIが見える形か)
  3. 税務・融資相談が同じ窓口でできるか
  4. 融資・M&A・IPOを視野に入れた支援実績があるか
  5. SlackやChatworkでのやり取りが可能か
  6. 使っているクラウド会計ソフトに対応しているか

経理体制の設計・経理代行をご検討の方へ

月次決算の遅れ・外注先の選び方・IPO準備まで、公認会計士・税理士事務所が一気通貫でご支援します。まずはお気軽にご相談ください。

無料相談・お問い合わせ

まとめ

経理代行の質は、発注側が決める。どんな担当者がやるか・何をさせるか・何を目指すか──外注先を選ぶ前にこの3点を自社で整理することが先決だ。外注先に任せきりにするのではなく、要件を明確にしてから選ぶ。それができていない外注は、担当者が変わっても同じ問題を繰り返す。

経理代行は始まりに過ぎない。その先に「経営者が数字で動ける状態」があって初めて、外注した意味が出てくる。経理体制の設計から相談したい場合は、こちらからお問い合わせください

さいごに

当事務所(公認会計士・税理士)では、記帳・月次の代行だけでなく、経理体制の設計・決算早期化・内部統制構築まで一気通貫でサポートしている。「経理担当が辞めた」「外注先を変えたい」「IPO準備に向けて体制を整えたい」という段階から相談を受け付けている。顧問税理士を探しているスタートアップ・中小企業のご相談もお気軽にどうぞ。

おすすめ記事