管理会計がうまくいかない会社が見落としていること──データの流れから設計し直す

管理会計を整えようとして、工数管理システムも入れたり、Excelのテンプレートも作ろうと努力する会社は多い。しかし、それでも毎月の経営会議は「なんとなく経費が多い気がする」とか「結局よくわからないね。どうなってるの?」と半端な形で終わってしまうことも多い。なぜだろうか?この問題の原因はツールではない。データの流れが壊れていて、欲しい情報の横のつながりができていないためである。

そこで、本稿では、管理会計が上手くいかない会社にありがちなことを解説する。

管理会計が機能しない会社に共通する3つの問題

管理会計の仕組みを整えようとした会社が、機能しない状態で止まってしまう原因は以下になる

ツールを先に入れて内面がバラバラになる

「とりあえずツールを入れればなんとかなるっしょ!」とシステムを導入したけど、上手く行かないケースは良く見かける。これはアンチパターンの一例である。

ツールは「データのインプット・アウトプットのための道具」に過ぎないため、その情報をどこから集め、どこに連携するかを考えなければ、効果が出てこない。

闇雲にツールを入れた結果、ツール間の連携も業務連携もチグハグになってしまい、結果的に業務が不具合になることも多い。

データの定義が部門ごとにバラバラ

基本的に情報連携は、上流から下流に必要な形式で情報を流すのが基本である。しかし、管理会計を含む後工程のことを考えずに、現場などが業務設計をして、後工程へ情報がうまく活用ができないことが多い。例えば、営業側は「お客が注文した瞬間」を売上とカウントして、会計は「収益が実現したタイミングや在庫移動が発生時」で計上するといったズレがあると、そのような調整などが求められる。それを防ぐためには、データ型や必要な情報の定義、渡し方などを定義する必要がある。

経理に必要な情報が届かない

管理会計が上手くいかない大きな要因一つに、月次が締まらない根本原因は「情報が経理に届かない」ことがある。

営業管理のExcelと会計ソフトがつながっていない。営業に「売上資料を送ってください」とメールを送る作業が毎月発生する。コストがどのプロジェクトに紐づくのか現場から収集できない。原価の配賦情報が入手できないなどがある。

これは経理の問題ではなく、情報フローの設計問題だ。経理には情報を収集できる範囲に制約があることが多いため、現場から情報を集める仕組みを作らならければならない。そこを整えない限り、どれだけ経理担当のスキルが上がっても月次は締まらない。

管理会計を動かす正しい順番

上記のような問題を解決するための方法を解説していく。

ステップ1:今のデータの流れを図に描く

まず「今、どこからどこへ数字が流れているか」をきちんと把握する。そのため業務の流れ図を作るのが良いだろう。ここには、売上はどのシステムで管理されているか。それが会計ソフトに連携されるまでのルートは何か。月次決算に必要な情報のうち、自動で集まるものと手作業が必要なものはどれかなどが記されている。

この図を描くだけで、ボトルネックが見えてくる。筆者が支援してきた現場では、図を書き始めた時点で「こんな問題があったのか!」という発見が起きる。

業務フローの可視化手法については業務を見える化するフローチャート作成ガイドで解説している。

ステップ2:数字が繋がらないポイントを特定する

流れを図にしたら、次はどこで数字が繋がらないかのを特定する。そのためには、以下の3点を確認することがある。

  • 定義のズレ:同じ「売上」でも、部門によって計上タイミングだったり金額の定義が違わないか確認する
  • 連携の断絶:情報連携の問題の要因を洗い出す。システム間連携の不足か、ワークフローの問題か、現場が情報を出来ていないかなど、要因を洗い出す
  • 承認の詰まり:情報が誰かのToDoに止まって先に進んでいない箇所を探す

この3点を確認するだけで、「管理会計以前に整えるべきこと」が明確になる。会計システムの連携設計についての基本的な考え方はこちらの記事も参考にしてほしい。

ステップ3:ツールは最後に選ぶ

データの流れを設計し、ボトルネックを識別してから、ようやく解決方法を選ぶ方法になる。

解決方法の基本はデータ連携をどうしたらうまくやれるかという観点を最優先にして、その方法を実現するために、システムを導入するのがあるべきである。

場合によっては「シンプルな通知やリマインド・マニュアル化」のみで解決する場合もあるが、

まずは仕組みを整えてスプレッドシートからが基本

管理会計を行うためには、まずはデータの流れを整えることが重要である。極論ではあるが、必要なデータが使いやすい形式でGoogleスプレッドシートで管理会計は問題なく動く。予実管理も原価管理も、まずはシートで十分だ。「どんな情報を、いつ、どこから集めて、どう使うか」という設計が先にある。その設計ができれば、ツールはあとからスケールさせればいい。

管理会計の支援をしていて最もよく見るパターンは「仕組みを先に作ろうとする」だ。チェックリストを作る。テンプレートを整える。システムをリッチにする。しかし、そこに力を入れても、情報フローが壊れていれば何も変わらない。実際に支援した会社において、毎月の経営会議が「試算表の報告のみ」で終わっていて、「なぜその数値になるのか」という点がつまりきってなかった。それは、「なんとなく」しか言えない情報しか集められておらず、必要なKPIなどを集めたうえで、経営会議に届いていなかったからだ。

半年かけてデータフローを整えた結果、経営会議でサービスの指標と会計数値をつなぎ合わせて業績管理の報告が出来るようになる。

アウトプットのイメージをする→そのために必要なデータの要件を決める→そこからスケールさせていく。その順番を守ることが、管理会計を機能させる最短ルートである。

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まとめ

管理会計がうまくいかない会社の問題は、ツールや経理のスキルにあるのではない。データが正しく流れていない構造的な問題だ。まずデータの流れを可視化し、数字が壊れているポイントを特定してから仕組みを整える。その順番を守れば、スプレッドシートでも管理会計は動く。

「何から始めればいいかわからない」という状態から抜け出す第一歩は、今の情報フローを図に描くことだ。管理会計が必要な理由についてはなぜ管理会計が必要なのか?でも整理している。

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参考資料

  • 企業会計原則(金融庁)
  • 管理会計論(日本管理会計学会)

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