中小企業が管理会計を始めるとき、最初にやること。プロジェクト損益管理の基本

はじめに

「そろそろ管理会計を始めたい」ととある社長から相談が来ることがある。

「今、経営でいちばん知りたい数字は何ですか?」と聞くと、明確な社長からは「とにかくプロジェクトの損益管理を徹底してやりたい」など、具体的な回答が届くことが多い。管理会計はそもそも経営者の意思により設計が変わるものであるから、最初の目標設定が特に重要である。

そこで、本コラムでは、管理会計のための情報定義と、プロジェクトコードを用いた損益管理の実例を解説する。

財務会計と管理会計は、そもそも目的が違う

財務会計は会計基準や税法による縛りがあることから、会計処理も決算書の形式も、ある程度決まった枠で行われることになる。

その反面、管理会計にはこの枠が存在しない。言ってしまえば、経営者の意思決定に役立つかどうかだけが判断基準になる。そのため、会社によって管理会計の最適解が変わってくる。例えば、店舗展開なら店舗別の損益、受託開発ならプロジェクト別の原価率とアサイン率、製造業なら製造原価の測定と原価率の調整——見るべき数字は業種ごとにまったく異なる。

そのことから、財務会計をベースに「とりあえず月次試算表を細かくする」だけでは、管理会計として上手くならない。

管理会計が詰まる理由は、情報不足ではなく定義不足だ

私のところに来る相談の多くは「情報が集まらない」という悩みから始まることが多い。しかし、実際に話を聞くと、その手前にある「そもそも何が必要で、どのようにデータを活用するかを定義できていない」ことが多い。

経営者が何を見たいかをまだ言語化できていない。情報を集めるプロセスがまだ存在しない。そして現場の協力を得られない——この3つが重なって、管理会計は動き出す前に止まる。

特に致命的なのは1つ目だ。見たい指標が決まっていないのに、情報収集の仕組みだけを先に作ろうとするからうまくいかない。指標が定義されないまま集めたデータは、あとで「結局何に使うんだっけ」という状態になることが多い。

データの流れそのものが壊れているケースについては、管理会計がうまくいかない会社が見落としていることで扱った。今回は、その手前の「そもそも何を見たいかが決まっていない」という段階を掘り下げていこう。

管理会計の始め方は、指標を定義することから始まる

先ほどもお伝えした通り、管理会計の最初の一歩は、経営で追うべき指標を定義することである。

指標が決まって初めて、手に入れるべき情報が決まる。そこから集める方法を小さく試し、徐々にブラッシュアップしていく。この順番を逆にすると、情報だけが集まって指標に使えないというオチになる。

管理会計の基礎的な位置づけについてはなぜ管理会計が必要なのか?でも整理しているが、ここでは「決めてから集める」という順番そのものに焦点を当てていきたいと思う。

受託開発を例にした、情報の集め方

ここでは、受託開発を例にした情報収集の例を解説する。

受託開発においては、まずプロジェクトごとの損益管理が最重要になる。黒字プロジェクトと赤字プロジェクトの違いを明らかにして、対応策を練り、黒字案件を獲得するための営業や管理体制を構築していくのが基本である。

受託開発で管理会計をやるなら、軸になるのはプロジェクトの売上とコストだ。

プロジェクトの売上は比較的追いやすい。厄介なのはコスト側である。

外注エンジニアを使っていれば「このプロジェクトにいくらかかったか」を明確にする必要があるため、請求書をプロジェクトごとに金額を分けて記載してもらうといった依頼を外注先に投げることになる。

人件費であれば、工数管理をしてプロジェクトごとの人件費を算出する。間接費については、一定のルールで配賦する。

ここに、プロジェクトの予算——総売上・総コスト・進捗状況、場合によっては損失引当金の見直しまで——が重なってくる。実際に支援した現場では、このコスト集計がいちばん時間を食う作業になっていた。

すべての起点になる「プロジェクトコード」

売上・コスト・配賦をひとつに紐づけるために必要なのが、プロジェクトコードだ。

まず、この紐づけキーを作ることから始める。

次に、それを他のコスト(人件費・外注費・間接費)にどう紐づけるかを考える。

最後に、それを記録するための方法を作る。

この順番を守れば、あとから集計単位を変えることになっても影響を局所化できる。プロジェクトコードのないまま集めたコストは、あとになって「このコストはどのプロジェクトのものか」が誰にも分からなくなり、集計をやり直すことになる一因にもなるためである。

人件費は、無理なく無駄なく集計する

人件費の集計では、どのプロジェクトにいくら時間をかけたかを記録することになる。

工数入力の負荷が高すぎると現場が協力しなくなるし、逆に粗すぎるとプロジェクト別の採算が見えなくなってしまう。

無理なく無駄なく集計できる粒度を探ることが、この作業の実質的なゴールといえる。

工数管理のような日次の情報連携は、月次決算のスピードにも直結する。月次決算を5営業日で締める会社が解決していることでも、情報が上流から届く速さが決算の速さを決めるという話をしている。

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指標の定義からプロジェクトコードのようなデータの紐づけ方まで、現場に合わせた管理会計の構築を支援しています。

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まとめ

管理会計は、指標を集める前に「経営者が何を知りたいか」を言語化することから始まる。それが決まって初めて、集める情報と、プロジェクトコードのような紐づけの仕組みが決まる。受託開発を例に挙げたが、店舗別損益でも製造原価でも、順番は同じだ。まずは経営者に、今いちばん知りたいことを1つ聞くところから始めてほしい。

管理会計の設計や、指標に紐づくデータの集め方について相談したい場合は、お問い合わせページからご連絡ください。

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